自分の能力を活かしたいと思っていた外国人が失望し離職してしまう要因の一つとして、期待していたのと異なる仕事を担当するケースです。
その背景の一つに、欧米など海外で見られる「ジョブ型」雇用と、日本型の雇用形態である「メンバーシップ型」雇用との違いがあります。
外国では、一定の分野のスペシャリストとして働く傾向が強くあります。大学でマーケティングを学んだとしたら、その知見を活かした仕事・ポスト(=ジョブ)に応募して職務に当たります。契約期間はそのジョブの期間であり、雇用が長く保証されているわけではありません。しかしあらかじめ職務記述書(ジョブ・ディスクリプション)で明示された以外の仕事は発生しませんから、入社したてだからと言って、庶務や雑用をさせられるなどと言うのはあり得ません。
仕事が変わる場合は社内の部署異動ではなく、同じ職種で他の企業へジョブ・ホッピングすることは極めて普通のことです。競合他社へ転職して同じ業務を担当したり、キャリアを積んだ後にその業界のコンサルタントとして活躍する人も珍しくありません。
一方、日本の新卒採用を見ると、技術系と法務や知財、経理など一部の事務職は、専門性を考慮して採用、配属されるのが普通ですが、営業・マーケティング、人事総務、企画、調達などの職種は、学校での専攻に関係なく配属されることが多く見られます。また就職した後も、会社に対して勤め続けるという意識が強く、同じ社内で違う職種への異動というのも普通に見られます。このような雇用形態を「メンバーシップ型」と言います。
外国の人から見るとこれはとても奇異に感じるようで、採用担当者が面接の際に「私も商学部の出身ですよ」と話したら「それなのになぜ採用担当なのですか」と驚かれたという話を聞いたことがあります。
外国人材を採用しようとするのであれば、このような文化の違いを認識したうえで、採用と配属でミスマッチのないように配慮しましょう。
もしも「メンバーシップ型」で外国人材を雇用しようと考えるのであれば、メンバーシップ型の良い点もありますので、メリットデメリットなどを採用の段階で説明しておきましょう。